【PFLS】月明りのない夜のこと【アフター】
夜の森の中、一匹の獣が横たわっていた
体の所々に傷があり、武器が刺さり、血を流しているその獣のことは見たことがあった
確か、ノーザリア側として、エルダーグラン側に襲い掛かっていた筈だ
戦いはこちら側の勝利で終わり、そうしてノーザリアの兵は自国へと引き上げていったから、ここに彼ないし彼女がいるのは奇妙なことに思ったけれど、襤褸雑巾のような有り様であることからして、どうやら捨て置かれたらしいことは、分かった
そういうミードはというと、森の広範囲に亘って仕掛けまくっていたトラップを回収するために、暗闇の中を歩き回っていたところだった。目的の為ならばどこまでも冷徹になれるとはいえ、だからって無為に命を傷つけたりするほど悪趣味ではない
「ア・・・・ア゛ア゛」
警戒を示した蜜蜂達が、近づかないようにと警告しているけれど、どうしてか、危険だとは思えなくて 、ミードは獣にそっと近づいた。六の青い目が、ゆっくりとこちらを向く。緩慢な動作で瞬きを数回すると、虚ろだった目に、僅かに光が灯った―――気がした
「ミ"ィ・・・?」
酷くひしゃげた声ではあったけれど、確かにそう、聞こえた
「な"んだヨ、ゴんなどころにいたのか・・・あいづがら、ヨ"グ生きのごっだなあ"、ざすがお"レ様のむずめ、え"らいゾォ・・・・」
譫言のように、けれど嬉しそうに紡がれる言葉
この獣とは、面識など、ある筈はないのに
でも
「・・・おとう、さん?」
唖然とミードの口から声が溢れる
あり得ないと理性が叫ぶ、自分の養父は五年前に反逆罪の罪を着せられて、腹に大穴を開けられて死んだじゃないか
でも、薄氷のような薄青い目も
淡く光る二つの角も
血に汚れている銀の毛も
いつかの面影と重なっている
何より自分のことをミィと呼ぶ人は、この世界でたった一人しか、いない
―――うっし、よく生き残った。流石俺様の娘。偉い、偉いぞ!きひひひ、わしゃわしゃしてやるぜー!――――
戦場から帰って来る度に、どれだけ他のことに手が行っていても、必ず自分を褒めてくれた言葉と、目の前の獣の声が重なる
あり得なくても、信じられなくても、きっとこの獣は自分の父なのだ
「…こんな姿になってまで、私を褒めに来なくてもよかったのに」
彼の傍に座り込み、銀の毛並みを撫でる
生きるために戦う自分達にとって、生き残ることこそが、最大の勝利
例え、仕事に失敗しても
例え、それが卑怯極まりなかったとしても
「私、勝ったよ、ねえ、ジーン」
少しだけ笑って、あの頃と同じことを言う
頬を伝うものには、気づかないふりをした
※ 最後に親子を再会させたかったので、エピローグとして描きました。最終章から参加した身なので仕方がないとはいえ、まだちょっと描き足りないなと思っていたところの、EXイベントは嬉しい限りです。ifの話だそうなので、ミードとユージーンの親子で参加できたらいいなーと思いつつ、来週に向けて本編で描き切れなかったネタを描いていきたい所存です。
※ 一先ず、本編イベントに参加された皆様、お疲れさまでした。こういうイベントに参加するのは初めてだったのですが、作品を見るのも作るのも楽しかったです。それから、作品の閲覧、いいね、ブックマークありがとうございました。もう少しだけこのイベントに居座る予定なので、よろしければまた見ていただけると幸いです。
体の所々に傷があり、武器が刺さり、血を流しているその獣のことは見たことがあった
確か、ノーザリア側として、エルダーグラン側に襲い掛かっていた筈だ
戦いはこちら側の勝利で終わり、そうしてノーザリアの兵は自国へと引き上げていったから、ここに彼ないし彼女がいるのは奇妙なことに思ったけれど、襤褸雑巾のような有り様であることからして、どうやら捨て置かれたらしいことは、分かった
そういうミードはというと、森の広範囲に亘って仕掛けまくっていたトラップを回収するために、暗闇の中を歩き回っていたところだった。目的の為ならばどこまでも冷徹になれるとはいえ、だからって無為に命を傷つけたりするほど悪趣味ではない
「ア・・・・ア゛ア゛」
警戒を示した蜜蜂達が、近づかないようにと警告しているけれど、どうしてか、危険だとは思えなくて 、ミードは獣にそっと近づいた。六の青い目が、ゆっくりとこちらを向く。緩慢な動作で瞬きを数回すると、虚ろだった目に、僅かに光が灯った―――気がした
「ミ"ィ・・・?」
酷くひしゃげた声ではあったけれど、確かにそう、聞こえた
「な"んだヨ、ゴんなどころにいたのか・・・あいづがら、ヨ"グ生きのごっだなあ"、ざすがお"レ様のむずめ、え"らいゾォ・・・・」
譫言のように、けれど嬉しそうに紡がれる言葉
この獣とは、面識など、ある筈はないのに
でも
「・・・おとう、さん?」
唖然とミードの口から声が溢れる
あり得ないと理性が叫ぶ、自分の養父は五年前に反逆罪の罪を着せられて、腹に大穴を開けられて死んだじゃないか
でも、薄氷のような薄青い目も
淡く光る二つの角も
血に汚れている銀の毛も
いつかの面影と重なっている
何より自分のことをミィと呼ぶ人は、この世界でたった一人しか、いない
―――うっし、よく生き残った。流石俺様の娘。偉い、偉いぞ!きひひひ、わしゃわしゃしてやるぜー!――――
戦場から帰って来る度に、どれだけ他のことに手が行っていても、必ず自分を褒めてくれた言葉と、目の前の獣の声が重なる
あり得なくても、信じられなくても、きっとこの獣は自分の父なのだ
「…こんな姿になってまで、私を褒めに来なくてもよかったのに」
彼の傍に座り込み、銀の毛並みを撫でる
生きるために戦う自分達にとって、生き残ることこそが、最大の勝利
例え、仕事に失敗しても
例え、それが卑怯極まりなかったとしても
「私、勝ったよ、ねえ、ジーン」
少しだけ笑って、あの頃と同じことを言う
頬を伝うものには、気づかないふりをした
※ 最後に親子を再会させたかったので、エピローグとして描きました。最終章から参加した身なので仕方がないとはいえ、まだちょっと描き足りないなと思っていたところの、EXイベントは嬉しい限りです。ifの話だそうなので、ミードとユージーンの親子で参加できたらいいなーと思いつつ、来週に向けて本編で描き切れなかったネタを描いていきたい所存です。
※ 一先ず、本編イベントに参加された皆様、お疲れさまでした。こういうイベントに参加するのは初めてだったのですが、作品を見るのも作るのも楽しかったです。それから、作品の閲覧、いいね、ブックマークありがとうございました。もう少しだけこのイベントに居座る予定なので、よろしければまた見ていただけると幸いです。
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2019-04-04 09:18
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