【PixZ】救援依頼
「さ、乗ってくれ」
クロタは自分の乗ってきた大型バンにみんなを誘導した。
ツムギを助手席に、残りの6人を後ろに乗せ、車は町の中心部を目指して走りだした。
祢子女の事務所の所在地である猫目町は、海沿いから少し離れた緩やかな山間の麓に位置している。
そして、駅を中心に繁華街が広がる町の中心部から放射線状に広がっていくにしたがって繁華街は次第に遠ざかり、閑静な住宅街に入っていく。「やつさき猫専門相談事務所」は、繁華街から住宅街のちょうど境目辺りに位置していた。
マリスが残していった動物愛護事務所の案内所は、猫目町の外部、遠く離れた距離にある、とある大都市にその所在地を指し示していた。
〈近未来型モデル都市 デイライト〉――と。
猫目町の繁華街の大通りを走るクロタのバンがビル街に差し掛かかった時。
後部座席の足元に座り込んでいたしぐれが、がっと身を乗り出してクロタに声をかけた。
「ねえ、クロタ」
「なんだ」
「ちょっとここらで止めてくれない?」
クロタは路肩に車を止めた。
「どうした?」
「あのね、この辺りに応援頼めそうなヒトがいるの。だから呼んでくるよ」
「応援だと?」
「うん!ママも知ってる人だから大丈夫だよ。じゃ、ちょっと待っててね!すぐ戻るよ」
「あいつが知ってる?……おい!」
しぐれは車から飛び降り、ビルの路地裏に入り込んでいった。
ビルの隙間を縫い、民家が集まっている場所に差し掛かると、しぐれは鼻をひくひくさせた。
「え~と、このにおい……あ、あっちだ」
真っ直ぐ進んで突き当りを右に曲がるとブロック塀の上に1匹の猫が寝そべっているのが見えた。
祢子女の知り合いの白黒のハチワレ猫だ。
「みっけた!……おーい、ハチ兄ぃ!」
手を振りながら駆け寄ると、しぐれは手を伸ばして塀の上で寝こけている猫の体を揺さぶった。
「ねえ、ハチ兄ィ!起きてよ!」
「あ゛あ゛ー……誰にゃぁ、昼寝の邪魔すんのは~……」
「ハチ兄ぃ、あたしだよ、しぐれ! いい加減、起きてったら」
自分の腕に顎を乗せて寝こけていた猫は、ゆっくり頭をもたげて塀の下を見下ろした
「オメ~は……ああ、ネコメんとこのガキんちょか。なんのようニャ?」
「ねえ、お願いがあんの」
「ああん?なんニャ」
しぐれは手短に用件を話した。
「ってわけでさ、お願い!一緒にママを探すの手伝ってよ!たくさんの助っ人が集まってくれたんだけど、ハチ兄がいてくれればもっと心強いから」
「いやニャ」
「?!……な、なんでぇ?」
あまりもの即答ぶりにしぐれは面食らった。
「ネコメにゃあ悪いが、めんどうごとはマッピラだからニャ」
「そんなあ……」
「オレは人間なんか嫌いニャ。そんな怪しくてアブナイやつなんかにゃ、関わりたくないニャ」
「でも……」
「わかったら帰れニャ。……くぅあーふぅ、いい気持ちで寝てたのにすっかり目が覚めちまったじゃニャいか……」
ハチ介はそっけなくけだるげに言い放った。
「むぅッ~……もういいよ、この薄情モン! 」
手を当ててのん気に欠伸をするハチ介にほっぺたを膨らませていたしぐれは、吐き捨てるように叫んでその場を駆け去った。
しぐれの足跡が消え去ったのち、ハチ介はゆっくりと頭をもたげ、しぐれの立ち去った方を見据えた。
そして、胸の中に去来する気まずさに顔をしかめた。
彼は数十年近く生きて既に妖怪と化した……いわゆる猫又という存在だ。日本各地を放浪しさまよった末、この猫目町にたどり着いた。そして祢子女と知り合ってから既に10年近い付き合いだ。
彼は人間嫌いだったが、彼女のことは唯一信頼に足りうる相手としてみており、ときおり事務所に顔を出したりもしていたし、時にご飯をごちそうになったりもしていた。
彼女の身を心配していないわけでは決してないし、彼女が実の娘のようにかわいがっているしぐれに万一のことがあれば、協力を断った手前寝覚めの悪い思いをさせられるだろう。そんなことは嫌だし、祢子女や彼女に関わる者たちが悲しむ顔を見るのもごめんだ。
「やれやれ、しかたねーニャーったく……」
詰めた息を吐き出して背伸びをすると、ハチ介は塀から飛び降り、しぐれのにおいを辿りながら後を追っていった……。
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うちの祢子女姐さんの知り合いの齢数十歳の白黒ハチワレ猫の猫又【ハチ介(illust/78275781)もマリス編に参戦いたします。
いざ出陣という意気込みででかけた後、目的地である動物愛護団体事務所へ向かう道中の出来事です。
.
当初は「ねこめの事務所」の舞台となる猫目町の中で物語が完結するイメージで、一行が向かう場所も町内の繁華街というイメージでした。
最終的に悪意ある第三者に翻弄される正義のヒーローとヴィランの衝突という構図に発展したこともあり、これからもいろんなヒーローやヴィランが集結する可能性を考えると町内だけじゃスケール的にみみっちくなっちまうだろうと思い、クロスオーバーらしくオリジナルの舞台設定を勝手ながら作ってみました。
ヒーローとして活躍する者たちやヴィランとして暗躍する者たちが多く居住・潜伏する、
近未来モデル都市として作られた大都会という設定です。
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〈デイライトシティ〉
日本政府が推し進める都市計画により、東京に代わる新首都としての機能を想定したモデル都市として建設された近未来型の大都市。
そこは未来都市にふさわしい高度なネットワークシステムによって運営・維持されているが、明るい未来にふさわしいデイライトという名に反し、急速な発展が多大なひずみを生み、多くの犯罪者を生み出す土壌が形成されてしまった。
立ち並ぶビルのはざまでよどんだ空気は悪意あるものを生み出す。
そうして生み出された悪意もまた、正義のヒーローたちを生み出す源となるのだ……。
実は異世界や異空間とのつながりも深く、地球外からも異星人とか犯罪者とかが
やってくるという、真もってカオスな都市と化してたりw
あくまでこの物語限定のオリジナル設定であり思い付きで勝手に作っちゃったものなので、不都合や問題があるようならばスルーしちゃってくださっておkです。
クロタは自分の乗ってきた大型バンにみんなを誘導した。
ツムギを助手席に、残りの6人を後ろに乗せ、車は町の中心部を目指して走りだした。
祢子女の事務所の所在地である猫目町は、海沿いから少し離れた緩やかな山間の麓に位置している。
そして、駅を中心に繁華街が広がる町の中心部から放射線状に広がっていくにしたがって繁華街は次第に遠ざかり、閑静な住宅街に入っていく。「やつさき猫専門相談事務所」は、繁華街から住宅街のちょうど境目辺りに位置していた。
マリスが残していった動物愛護事務所の案内所は、猫目町の外部、遠く離れた距離にある、とある大都市にその所在地を指し示していた。
〈近未来型モデル都市 デイライト〉――と。
猫目町の繁華街の大通りを走るクロタのバンがビル街に差し掛かかった時。
後部座席の足元に座り込んでいたしぐれが、がっと身を乗り出してクロタに声をかけた。
「ねえ、クロタ」
「なんだ」
「ちょっとここらで止めてくれない?」
クロタは路肩に車を止めた。
「どうした?」
「あのね、この辺りに応援頼めそうなヒトがいるの。だから呼んでくるよ」
「応援だと?」
「うん!ママも知ってる人だから大丈夫だよ。じゃ、ちょっと待っててね!すぐ戻るよ」
「あいつが知ってる?……おい!」
しぐれは車から飛び降り、ビルの路地裏に入り込んでいった。
ビルの隙間を縫い、民家が集まっている場所に差し掛かると、しぐれは鼻をひくひくさせた。
「え~と、このにおい……あ、あっちだ」
真っ直ぐ進んで突き当りを右に曲がるとブロック塀の上に1匹の猫が寝そべっているのが見えた。
祢子女の知り合いの白黒のハチワレ猫だ。
「みっけた!……おーい、ハチ兄ぃ!」
手を振りながら駆け寄ると、しぐれは手を伸ばして塀の上で寝こけている猫の体を揺さぶった。
「ねえ、ハチ兄ィ!起きてよ!」
「あ゛あ゛ー……誰にゃぁ、昼寝の邪魔すんのは~……」
「ハチ兄ぃ、あたしだよ、しぐれ! いい加減、起きてったら」
自分の腕に顎を乗せて寝こけていた猫は、ゆっくり頭をもたげて塀の下を見下ろした
「オメ~は……ああ、ネコメんとこのガキんちょか。なんのようニャ?」
「ねえ、お願いがあんの」
「ああん?なんニャ」
しぐれは手短に用件を話した。
「ってわけでさ、お願い!一緒にママを探すの手伝ってよ!たくさんの助っ人が集まってくれたんだけど、ハチ兄がいてくれればもっと心強いから」
「いやニャ」
「?!……な、なんでぇ?」
あまりもの即答ぶりにしぐれは面食らった。
「ネコメにゃあ悪いが、めんどうごとはマッピラだからニャ」
「そんなあ……」
「オレは人間なんか嫌いニャ。そんな怪しくてアブナイやつなんかにゃ、関わりたくないニャ」
「でも……」
「わかったら帰れニャ。……くぅあーふぅ、いい気持ちで寝てたのにすっかり目が覚めちまったじゃニャいか……」
ハチ介はそっけなくけだるげに言い放った。
「むぅッ~……もういいよ、この薄情モン! 」
手を当ててのん気に欠伸をするハチ介にほっぺたを膨らませていたしぐれは、吐き捨てるように叫んでその場を駆け去った。
しぐれの足跡が消え去ったのち、ハチ介はゆっくりと頭をもたげ、しぐれの立ち去った方を見据えた。
そして、胸の中に去来する気まずさに顔をしかめた。
彼は数十年近く生きて既に妖怪と化した……いわゆる猫又という存在だ。日本各地を放浪しさまよった末、この猫目町にたどり着いた。そして祢子女と知り合ってから既に10年近い付き合いだ。
彼は人間嫌いだったが、彼女のことは唯一信頼に足りうる相手としてみており、ときおり事務所に顔を出したりもしていたし、時にご飯をごちそうになったりもしていた。
彼女の身を心配していないわけでは決してないし、彼女が実の娘のようにかわいがっているしぐれに万一のことがあれば、協力を断った手前寝覚めの悪い思いをさせられるだろう。そんなことは嫌だし、祢子女や彼女に関わる者たちが悲しむ顔を見るのもごめんだ。
「やれやれ、しかたねーニャーったく……」
詰めた息を吐き出して背伸びをすると、ハチ介は塀から飛び降り、しぐれのにおいを辿りながら後を追っていった……。
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うちの祢子女姐さんの知り合いの齢数十歳の白黒ハチワレ猫の猫又【ハチ介(illust/78275781)もマリス編に参戦いたします。
いざ出陣という意気込みででかけた後、目的地である動物愛護団体事務所へ向かう道中の出来事です。
.
当初は「ねこめの事務所」の舞台となる猫目町の中で物語が完結するイメージで、一行が向かう場所も町内の繁華街というイメージでした。
最終的に悪意ある第三者に翻弄される正義のヒーローとヴィランの衝突という構図に発展したこともあり、これからもいろんなヒーローやヴィランが集結する可能性を考えると町内だけじゃスケール的にみみっちくなっちまうだろうと思い、クロスオーバーらしくオリジナルの舞台設定を勝手ながら作ってみました。
ヒーローとして活躍する者たちやヴィランとして暗躍する者たちが多く居住・潜伏する、
近未来モデル都市として作られた大都会という設定です。
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〈デイライトシティ〉
日本政府が推し進める都市計画により、東京に代わる新首都としての機能を想定したモデル都市として建設された近未来型の大都市。
そこは未来都市にふさわしい高度なネットワークシステムによって運営・維持されているが、明るい未来にふさわしいデイライトという名に反し、急速な発展が多大なひずみを生み、多くの犯罪者を生み出す土壌が形成されてしまった。
立ち並ぶビルのはざまでよどんだ空気は悪意あるものを生み出す。
そうして生み出された悪意もまた、正義のヒーローたちを生み出す源となるのだ……。
実は異世界や異空間とのつながりも深く、地球外からも異星人とか犯罪者とかが
やってくるという、真もってカオスな都市と化してたりw
あくまでこの物語限定のオリジナル設定であり思い付きで勝手に作っちゃったものなので、不都合や問題があるようならばスルーしちゃってくださっておkです。
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2020-02-27 10:17
Comments (11)
姐さんのご無事を…心よりお祈りしております(´・ω・`) それにしても祢子女姐さん行方不明事件、色んな方々を巻き込んで 展開してますねー。解決まであと少し…?いやいや、むしろこれから とんでもない方向に拡大する予感が…まだまだ結末が見えない!? (ちなみに私はクロタさん推しですw
View Repliesなるほど、しぐれちゃんの猫又仲間ですか! こーいう素っ気ないキャラに限って大事な場面ですごいカッコいい事してくれる感w そしてホントにアーカムシティみたいな街の設定までw
View Repliesおぉここでついにハチ介が登場。 超メンド臭そうなそぶりややれやれ…って仕草がいわゆる猫そのものではーちゃんさん良く観察してらっしゃるw 猫は容姿もですがあのあたりの性格も含めて好きなんだよな~何しても許してしまう♡ ねこめ姐さん奪還にどんな形で協力していくのか見ものですわ。
View Repliesついにしぐれさん側にも協力者(?)が現れたようですね。ただ立場上表立って加勢する感じではなさそうですね。
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