グラニル無配再録+通販のお知らせ
19/04/28の平成最後のスパコミにてグラニルプチで出したペーパーの再録です。
テキストは通販のお知らせの下に貼り付けますので、良ければそちらで読んでやって下さい。
SPARKに合わせてとらの取寄販売を行っています(グラニル、ライニル、東巻、真手)
10/18までの期間限定になりますのでよろしくお願いします→https://t.co/zPZee5UTo0
BOOTHでも弱ペダ本と00のとらで未取扱の本を販売中ですが、10/25頃にいったん閉めますのでよろしくお願いします(グラニル、ライニル、東巻、真手)→https://hijiri-t.booth.pm/
真手本のみフロマでも取扱中です→https://t.co/LUOg0crb7n
グラニルの再録本や、ライニルの再録本は通販はとらのあな専売になります。よろしくお願いします。
↓↓↓以下グラニル無配ペーパーのテキスト文
花冠 グラハム×ニール
「――なんだよ、これ」
「花冠だ。似合うぞ?」
たまにはいいだろうと非番のグラハムに車で連れ出された先でのことだった。ストレスでもたまっていたのか、自然を求めるように車を走らせた先で目に付いた野原に、ふたりして子どものように転がった。そうして横になってしまうと、自分も疲れがたまっていたのだろう。そのままうっかり眠ってしまったようだった。そして現在に至る。
道から少しだけ外れた場所にある、私有地なのか国有地なのかもいまいちわからない人気がない野原だった。春先ゆえにまだ草も短いそこに横たわっているロックオンが目を覚ましたとき、自らの顔の上に乗っかっていたのは、白い花で編まれた花冠だった。どうやらロックオンが眠っている間に、野原に咲いていた花でグラハムが作ったらしかった。ずいぶんとかわいらしいことをするとも思うが、同時にそういうロマンチックなことが結構好きな男だよな、とも同時に納得してしまうものもあった。
甘い香りを漂わせるその花冠は、白詰草で作られていた。故国ではシャムロックと呼ばれるそれは、胸が焦がれてしまいそうなほどに懐かしい。昔、妹が自分と弟に作ってくれたのを思い出してしまう。
「似合わねえよ。こんな可愛いの。あんたの方が似合うって」
あまりにも幸せで、だからこそつらくなってしまう記憶を散らすように身体を起こした。あえて明るい声を上げながら、ロックオンは自分の上にあった花冠をグラハムの頭の上に乗せてしまう。そして微笑んだ。
「ああ、やっぱり似合う。なんだっけ、ギリシャ神話の神様みてえ。月桂樹の葉っぱの冠つけてるやつ」
「月桂樹というと、アポロンだろうか」
「ああそうそう、それ。太陽の神様だな。あんたに似合うよ」
グラハムの軽くウェーブがかかった金髪は、黄金のようだと言うほどには明るくはないけれども、日差しに透けてきらきらと輝いて綺麗だった。白と緑で構成されている白詰草の花冠がよく似合っていた。しかし褒められた当のグラハムは不満げな表情を浮かべてくる。
「――君が私を褒めてくれること自体は喜ばしいが。だが、アポロンに、特に月桂冠をかぶった姿に例えられるのはあまり嬉しくないな」
「へ? ああ、そうか」
グラハムの言葉の意味がわからず、ロックオンは一瞬きょとんとしてしまう。しかし次の瞬間には思い当たる。ギリシャ神話かと。
「確かにおれがなるなら月桂樹よりもシャムロックの方がいいかもな」
「私はアポロンのように君を逃がしやしないぞ。それとも逃げ切りたいのか」
笑ってかわそうとするロックオンを、グラハムは草の上に押し倒してきた。再び野原の上に転がることになったロックオンは、グラハムを見上げる。確かにこの男はギリシャの太陽神なみにしつこそうだと。
ギリシャ神話の太陽神であるアポロンは、彫像や絵画で描かれる場合は大抵月桂冠を身につけている。だがその月桂冠にまつわる神話はなかなかにひどいものではある。愛の神エロスの弓を撃たれ、ニンフの少女であるダフネに恋に落ちたアポロンが、彼女を追い回したという話である。
アポロンの気持ちはあくまでも一方通行であり、ダフネは追いかけてくる太陽神からひたすらに逃げ続けた。そしてついに逃げきれないと思ったそのときに、ダフネは水の神である父に願って月桂樹にその身を変えてもらったのだ。
アポロンは月桂樹に変わってしまったダフネの姿に嘆きながらも、彼女に変わらぬ愛を誓い、その証として月桂樹で編んだ冠を身につけるようになった、というのが月桂冠にまつわる神話だった。
「はは、こわいこわい。でもそうだなぁ、じゃあ、おれがどっかに行っちまったら追いかけてきてくれよ。出来る範囲でいいからさ」
自分を見下ろしてくるグラハムへとロックオンは手を伸ばす。そしてその頬を手袋をはめた手のひらでするりと撫でる。自分よりも年上だというのに、その真っ直ぐさゆえに幼くすらみえるその顔を。そして微笑む。するとそんなロックオンを見てグラハムが苦しげな表情を浮かべた。
「――君は、まるで、どこかに行ってしまうかのようなこと言う」
しかしロックオンはそんなグラハムの言葉に答える言葉を持たなかった。曖昧に微笑みながら苦しげな男にくちづける。
いつまでも変わらぬ愛を誓わなくてもかまわない。それでもいつか、自分がグラハムの前から姿を消した後でも、彼のこころのなかで、少しでも長い間自分がいてくれたら嬉しいと、そう思う。白詰草の花言葉のように、いつまでも自分を思いだしてくれたらと。これはひどいエゴイズムだけれども。
そんなことを考えながらも、ロックオンはグラハムの背中に腕を回した。
なにか感想とかありましたらマシュマロとかもらえると嬉しいです。
マシュマロ→https://marshmallow-qa.com/hijiri_t?utm_medium=url_text&utm_source=promotion
WEB拍手→http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=eroticm
テキストは通販のお知らせの下に貼り付けますので、良ければそちらで読んでやって下さい。
SPARKに合わせてとらの取寄販売を行っています(グラニル、ライニル、東巻、真手)
10/18までの期間限定になりますのでよろしくお願いします→https://t.co/zPZee5UTo0
BOOTHでも弱ペダ本と00のとらで未取扱の本を販売中ですが、10/25頃にいったん閉めますのでよろしくお願いします(グラニル、ライニル、東巻、真手)→https://hijiri-t.booth.pm/
真手本のみフロマでも取扱中です→https://t.co/LUOg0crb7n
グラニルの再録本や、ライニルの再録本は通販はとらのあな専売になります。よろしくお願いします。
↓↓↓以下グラニル無配ペーパーのテキスト文
花冠 グラハム×ニール
「――なんだよ、これ」
「花冠だ。似合うぞ?」
たまにはいいだろうと非番のグラハムに車で連れ出された先でのことだった。ストレスでもたまっていたのか、自然を求めるように車を走らせた先で目に付いた野原に、ふたりして子どものように転がった。そうして横になってしまうと、自分も疲れがたまっていたのだろう。そのままうっかり眠ってしまったようだった。そして現在に至る。
道から少しだけ外れた場所にある、私有地なのか国有地なのかもいまいちわからない人気がない野原だった。春先ゆえにまだ草も短いそこに横たわっているロックオンが目を覚ましたとき、自らの顔の上に乗っかっていたのは、白い花で編まれた花冠だった。どうやらロックオンが眠っている間に、野原に咲いていた花でグラハムが作ったらしかった。ずいぶんとかわいらしいことをするとも思うが、同時にそういうロマンチックなことが結構好きな男だよな、とも同時に納得してしまうものもあった。
甘い香りを漂わせるその花冠は、白詰草で作られていた。故国ではシャムロックと呼ばれるそれは、胸が焦がれてしまいそうなほどに懐かしい。昔、妹が自分と弟に作ってくれたのを思い出してしまう。
「似合わねえよ。こんな可愛いの。あんたの方が似合うって」
あまりにも幸せで、だからこそつらくなってしまう記憶を散らすように身体を起こした。あえて明るい声を上げながら、ロックオンは自分の上にあった花冠をグラハムの頭の上に乗せてしまう。そして微笑んだ。
「ああ、やっぱり似合う。なんだっけ、ギリシャ神話の神様みてえ。月桂樹の葉っぱの冠つけてるやつ」
「月桂樹というと、アポロンだろうか」
「ああそうそう、それ。太陽の神様だな。あんたに似合うよ」
グラハムの軽くウェーブがかかった金髪は、黄金のようだと言うほどには明るくはないけれども、日差しに透けてきらきらと輝いて綺麗だった。白と緑で構成されている白詰草の花冠がよく似合っていた。しかし褒められた当のグラハムは不満げな表情を浮かべてくる。
「――君が私を褒めてくれること自体は喜ばしいが。だが、アポロンに、特に月桂冠をかぶった姿に例えられるのはあまり嬉しくないな」
「へ? ああ、そうか」
グラハムの言葉の意味がわからず、ロックオンは一瞬きょとんとしてしまう。しかし次の瞬間には思い当たる。ギリシャ神話かと。
「確かにおれがなるなら月桂樹よりもシャムロックの方がいいかもな」
「私はアポロンのように君を逃がしやしないぞ。それとも逃げ切りたいのか」
笑ってかわそうとするロックオンを、グラハムは草の上に押し倒してきた。再び野原の上に転がることになったロックオンは、グラハムを見上げる。確かにこの男はギリシャの太陽神なみにしつこそうだと。
ギリシャ神話の太陽神であるアポロンは、彫像や絵画で描かれる場合は大抵月桂冠を身につけている。だがその月桂冠にまつわる神話はなかなかにひどいものではある。愛の神エロスの弓を撃たれ、ニンフの少女であるダフネに恋に落ちたアポロンが、彼女を追い回したという話である。
アポロンの気持ちはあくまでも一方通行であり、ダフネは追いかけてくる太陽神からひたすらに逃げ続けた。そしてついに逃げきれないと思ったそのときに、ダフネは水の神である父に願って月桂樹にその身を変えてもらったのだ。
アポロンは月桂樹に変わってしまったダフネの姿に嘆きながらも、彼女に変わらぬ愛を誓い、その証として月桂樹で編んだ冠を身につけるようになった、というのが月桂冠にまつわる神話だった。
「はは、こわいこわい。でもそうだなぁ、じゃあ、おれがどっかに行っちまったら追いかけてきてくれよ。出来る範囲でいいからさ」
自分を見下ろしてくるグラハムへとロックオンは手を伸ばす。そしてその頬を手袋をはめた手のひらでするりと撫でる。自分よりも年上だというのに、その真っ直ぐさゆえに幼くすらみえるその顔を。そして微笑む。するとそんなロックオンを見てグラハムが苦しげな表情を浮かべた。
「――君は、まるで、どこかに行ってしまうかのようなこと言う」
しかしロックオンはそんなグラハムの言葉に答える言葉を持たなかった。曖昧に微笑みながら苦しげな男にくちづける。
いつまでも変わらぬ愛を誓わなくてもかまわない。それでもいつか、自分がグラハムの前から姿を消した後でも、彼のこころのなかで、少しでも長い間自分がいてくれたら嬉しいと、そう思う。白詰草の花言葉のように、いつまでも自分を思いだしてくれたらと。これはひどいエゴイズムだけれども。
そんなことを考えながらも、ロックオンはグラハムの背中に腕を回した。
なにか感想とかありましたらマシュマロとかもらえると嬉しいです。
マシュマロ→https://marshmallow-qa.com/hijiri_t?utm_medium=url_text&utm_source=promotion
WEB拍手→http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=eroticm
4
3
1142
2020-10-07 19:40
Comments (0)
No comments