冷静さを失い

勝負はついた。「勝者、ルイーズ・ヴェルヌ！」闘技場に勝ち名乗りがあがる。あまりにも意外な優勝者に、観衆のどよめきはしばらく収まりそうになかった。その様子に困惑したルイーズが闘技場を跡にしようとしたときだった。いったいどこに隠し持っていたのか、ドルチが鉄製の斧を手にルイーズの背中から襲いかかった。その形相は完全に冷静さを失っている。過程がどうであろうと、最後に立っていたものが勝者。ドルチは蛮族に伝わる戦いの理念をどこまでも信奉している。自らの行為に対して一切のためらいはなかった。