Breath.(漫画111話)
「外でやらない?…や、土手とかじゃなくて、どっか自然の中で?アウトドア的な?」巧がそんな事を言うのは珍しい。その日、朝イチで大阪から電車に揺られ、待ち合わせの伊賀上野駅を降りると、巧と一緒にソフィが待っていた。巧がこういう事をするのは、珍しい。◆◆
ソフィはこの4年でさらに美しくなっていた。美人という表現は陳腐で、もはやこの世の女性の誰も敵わないさながら女神のようだった。今更どうこうとは思わないが、例えようのない淡い青い思い出が胸をよぎる。「なんだよ、おめェら、結婚します報告だか?」ニヤリと紅騎が冗談をとばすと、ふたりは困ったような照れたような顔で「「違う違う」」と笑った。10年程前の高校時代の、あの頃のままの3人の空気。5年程前に「Solid Slash」と「Bitter Mocha」で対バンした時期には、あまり同級生だけで話す機会はなかった。懐かしい。
紅騎は、巧とだけは年に1度くらいで会っていた。巧には紅騎は胸の内をほぼ全て打ち明けており、紅騎を心配して時々、絶妙に鬱陶しくない距離感で連絡をしてきてくれる。会う時は、ギターとカホンやジャンベで遊んだ。
巧の車に揺られ、途中BBQの買い出しを済ませて三重と滋賀の県境の山々を扇ぐキャンプ場に着くと、巧はソフィと手早くタープを張った。9月に入ったとは言え陽射しは強く、日陰でボーッと見てるだけでもじんわりどころではない汗をかく。けれども、山あいを抜けるそよ風が優しく、心地好かった。◆◆
おぉ。さすがは老夫婦、息がぴったりだがや。えーなぁ…。会社で誘い、いっつも断っとったで、こういうのひさびさだがや…。
……風が気持ちえぇ……。智華さんとチビちせと歌ったあの丘の風みてぇだ……ま、自然の風はどっこも似たよーなもんかもしれんってこったな…。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆次回の第112話は、来月初め、12/4(日)に更新の予定です。
★BGM★
☆Over The Rainbow(Judy Garland/PONTA BOX)
☆I Will Remember(Toto)
☆Sunset(Cozy Powell/ROCK’N ROLL STANDARD CLUB BAND)
ソフィはこの4年でさらに美しくなっていた。美人という表現は陳腐で、もはやこの世の女性の誰も敵わないさながら女神のようだった。今更どうこうとは思わないが、例えようのない淡い青い思い出が胸をよぎる。「なんだよ、おめェら、結婚します報告だか?」ニヤリと紅騎が冗談をとばすと、ふたりは困ったような照れたような顔で「「違う違う」」と笑った。10年程前の高校時代の、あの頃のままの3人の空気。5年程前に「Solid Slash」と「Bitter Mocha」で対バンした時期には、あまり同級生だけで話す機会はなかった。懐かしい。
紅騎は、巧とだけは年に1度くらいで会っていた。巧には紅騎は胸の内をほぼ全て打ち明けており、紅騎を心配して時々、絶妙に鬱陶しくない距離感で連絡をしてきてくれる。会う時は、ギターとカホンやジャンベで遊んだ。
巧の車に揺られ、途中BBQの買い出しを済ませて三重と滋賀の県境の山々を扇ぐキャンプ場に着くと、巧はソフィと手早くタープを張った。9月に入ったとは言え陽射しは強く、日陰でボーッと見てるだけでもじんわりどころではない汗をかく。けれども、山あいを抜けるそよ風が優しく、心地好かった。◆◆
おぉ。さすがは老夫婦、息がぴったりだがや。えーなぁ…。会社で誘い、いっつも断っとったで、こういうのひさびさだがや…。
……風が気持ちえぇ……。智華さんとチビちせと歌ったあの丘の風みてぇだ……ま、自然の風はどっこも似たよーなもんかもしれんってこったな…。
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◆次回の第112話は、来月初め、12/4(日)に更新の予定です。
★BGM★
☆Over The Rainbow(Judy Garland/PONTA BOX)
☆I Will Remember(Toto)
☆Sunset(Cozy Powell/ROCK’N ROLL STANDARD CLUB BAND)
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2022-11-06 23:58
Comments (9)
紅氏、今大阪で何してるんでしょう?いい人いるのかな? 今幸せだとしてもこのシチュエーションは胸がざわつきますね・・・巧氏も帰り道「普通に送る」以上にしたかったのね(笑)そしてソフィー姫は何を思うのか。紅氏の気遣いが無駄になりませんように。
View Replies(続き)さて、もう片方の気になる展開については紅騎くんが非常に明快な雰囲気作りをした訳ですが………巧くん、まだ遅くないからその青いminiで風のように引き返せ、今すぐッ!!(←笑) 日暮れ前の山間の描写、火の傍らの暖かさや漂う匂いも伝わって来そうな風情が素敵です。
View Repliesソフィさんが踏み込みましたが、やはり……。懐かしい日々の思い出や屈託と一緒に今なお六弦を抱える紅騎くんの歌が"Over The Rainbow"なのには何かしみじみと心に来るものがあります。
秋の風の中での3人でのBBQ、とても楽しそうです―紅さん、ソフィさんの前でも唄を披露するのは久しぶりだったのですね。ギターも紅さんの持ち込んだものなのでしょうか?どんなに音楽の世界に居る事を諦めたかのように見えてもギターは手放していない、と言う事の意味を思わず考えてしまいました。
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