ひまわりと石の薬研 2
「な、なに、あれっ」
近づいたらヤバい。わたしにも本能でわかりました。あんな毒にひたされていたら、木も草もかれはててしまうでしょう。
「アレは、ママが背負っている闇です」
石の薬研くんは、かなしそうに言いました。
闇?
あんな悪口ばかりはきちらす、変なバケモノが?
もしかして、アレにからみつかれて今にもかれそうな森の木が、ニンジンさんなの?
石の薬研くんはうなずきました。
「アレは人の悪意。ママが生まれてからずっとあびてきた誹謗中傷の具現化です。ママはいま、その大きな闇を愛する人から遠ざけるために戦ってます」
愛する人から遠ざけるって。
ハッとわたしは思い出しました。つい最近、聞いたばかりの、あの決意。ニンジンさんはなんて言ってた?
「足を治療するために転勤するのはただの建前です。このままではママは二度と誰も親交を持たず、ひとりで遠い地で戦いの中で寿命を迎えてしまう」
二度とだれにも会わずに、死ぬ?
ひとりぼっちで、ニンジンさんが死んじゃうなんて。
わたしはさけんでいました。
「そんなのダメじゃん!」
いくら守られても、その代わりにニンジンさんが死ぬなんて、ぜったいにダメ、不可不可の不可──っ!
「うん、だからお姉ちゃんをよんだのです」
強く、わたしの手をにぎったまま、石の薬研くんは話しつづけます。
「ママが本当にほしがっているのは、誰かへの復讐でも、裁きでも、処刑でもありません。でも、誰もママの本当の願いを気づいていません。
今までママは、大事の人の幸せのために身をひくことをたくさんくりかえしてきた。自分の幸せをたくさんあきらめてきました」
それは、──少しだけ知ってる。
ニンジンさんの刀剣男士から、教えてもらったから。
日本に来たのだって、婚約者が親友を好きになって、結婚したいって言い出したから──身をひいたからだし。
あのゴリラセンパイのひょうばんが悪くならないようにって、男とまちがえられているのに「ちがう」って言わないで十年も……。
「本当はもう手をはなしたくない、はなれたくないという、自分の心のさけびから目をそらし続けました。でも、ママ本当は、ずっと誰かに引き止められたかった。『外見も性別もどうでもいい、君という人といっしょにいたいんだ』というひと言を言ってくれる人を、ずっと待っていたんです」
ニンジンさん──っ。
・・・・
『外見も性別もどうでもいい、君という人といっしょにいたいんだ』
って言ってくれる人? いないわけないじゃん。
ニンジンさんのことを大切に思ってる人はたくさんいるよ!
ほら、身近なところにだって。ひろさんや、青江さんや、他にも本丸中の刀剣男士はみんなニンジンさんのことが一番すきだよ。ニンジンさんが男でも女でも関係ないって、ぜったい言ってくれるよ!
「もちろん、刀剣男士は無条件にママを受け入れてくれますけど。でもそれは主だから。刀剣男士は主に好感をもつのは、自然のことですから自信の元になれないです」
あ……。
主と刀剣男士という関係だから、信じられないの? あんなにみんな、だいすきなのに。ニンジンさんだけの刀になるためにって極めてきてるのに? そんなあ……。
「いくら刀剣男士達が守っても、人の悪意からの刃からは守れないです。悪いうわさ、悪い言葉、ママの心にからみついて毒をためていく……ハロウィンごろから、とくにひどくなりました。ママは強い人、だけどもう限界です」
ハロウィン、うわさ……まさか。
「わ、わたしがいけなかったのかな。わたしが、トト■の中の人は女だって、バラしたから」
だか着ぐるみ着てて正体わからないのに、ニンジンさんだってみんな知って……根も葉もない悪口を言うようになったの? かくしたかったから着ていたのに、わたしが言ったから。
じゃあ、ニンジンさんを苦しめてる悪意の毒は、わ、わたしのせい……!
おこられて、きらわれて当然だ。ちょう本人だもん…。
「ニンジンさんに、わたしの声もうとどかないかな?」
ぼろぼろ、なみだがこぼれます。
わたしがわるい子だから、いらないことを言ったから、ニンジンさんは遠くに行っちゃうんだ…。
「そんなことないです! ママはお姉ちゃんのことをぜったいにせめたりしません。ただ、あの男の作った傷は、あの男しかなおせないってことです!」
石の薬研くんは言いました。
「鈍感で節穴な男ですけど、彼がママとすごした十年は本物です。彼ならきっと、ママが一番ほしい言葉を言ってくれると信じてます」
だって、ゴリラセンパイはほんっとにドンカンでバカでフシアナなんだよ。十年もすぐそばにいて
いまだに女だって気がつかないんだよ。
あれだけうわさになってるのに、なーんにも言ってこないって、全然うわさを信じてないってことだよね。何を言われても、自分の信じたいことだけ信じて真実を見ようとしてないんだよ。
石の薬研くんは、わたしの手をつかんで、ひっしにせまってきました。
「そうです。だからお姉ちゃん、お願い! あの男に真実を教えて」
え、えええっ。わたしが?
・・・・
・・・
・・
先日予告したとおり、今日入院しました。手術は金曜日……無事に終わったら続きをアップします。┣¨キ((p>ω<q))┣¨キ
近づいたらヤバい。わたしにも本能でわかりました。あんな毒にひたされていたら、木も草もかれはててしまうでしょう。
「アレは、ママが背負っている闇です」
石の薬研くんは、かなしそうに言いました。
闇?
あんな悪口ばかりはきちらす、変なバケモノが?
もしかして、アレにからみつかれて今にもかれそうな森の木が、ニンジンさんなの?
石の薬研くんはうなずきました。
「アレは人の悪意。ママが生まれてからずっとあびてきた誹謗中傷の具現化です。ママはいま、その大きな闇を愛する人から遠ざけるために戦ってます」
愛する人から遠ざけるって。
ハッとわたしは思い出しました。つい最近、聞いたばかりの、あの決意。ニンジンさんはなんて言ってた?
「足を治療するために転勤するのはただの建前です。このままではママは二度と誰も親交を持たず、ひとりで遠い地で戦いの中で寿命を迎えてしまう」
二度とだれにも会わずに、死ぬ?
ひとりぼっちで、ニンジンさんが死んじゃうなんて。
わたしはさけんでいました。
「そんなのダメじゃん!」
いくら守られても、その代わりにニンジンさんが死ぬなんて、ぜったいにダメ、不可不可の不可──っ!
「うん、だからお姉ちゃんをよんだのです」
強く、わたしの手をにぎったまま、石の薬研くんは話しつづけます。
「ママが本当にほしがっているのは、誰かへの復讐でも、裁きでも、処刑でもありません。でも、誰もママの本当の願いを気づいていません。
今までママは、大事の人の幸せのために身をひくことをたくさんくりかえしてきた。自分の幸せをたくさんあきらめてきました」
それは、──少しだけ知ってる。
ニンジンさんの刀剣男士から、教えてもらったから。
日本に来たのだって、婚約者が親友を好きになって、結婚したいって言い出したから──身をひいたからだし。
あのゴリラセンパイのひょうばんが悪くならないようにって、男とまちがえられているのに「ちがう」って言わないで十年も……。
「本当はもう手をはなしたくない、はなれたくないという、自分の心のさけびから目をそらし続けました。でも、ママ本当は、ずっと誰かに引き止められたかった。『外見も性別もどうでもいい、君という人といっしょにいたいんだ』というひと言を言ってくれる人を、ずっと待っていたんです」
ニンジンさん──っ。
・・・・
『外見も性別もどうでもいい、君という人といっしょにいたいんだ』
って言ってくれる人? いないわけないじゃん。
ニンジンさんのことを大切に思ってる人はたくさんいるよ!
ほら、身近なところにだって。ひろさんや、青江さんや、他にも本丸中の刀剣男士はみんなニンジンさんのことが一番すきだよ。ニンジンさんが男でも女でも関係ないって、ぜったい言ってくれるよ!
「もちろん、刀剣男士は無条件にママを受け入れてくれますけど。でもそれは主だから。刀剣男士は主に好感をもつのは、自然のことですから自信の元になれないです」
あ……。
主と刀剣男士という関係だから、信じられないの? あんなにみんな、だいすきなのに。ニンジンさんだけの刀になるためにって極めてきてるのに? そんなあ……。
「いくら刀剣男士達が守っても、人の悪意からの刃からは守れないです。悪いうわさ、悪い言葉、ママの心にからみついて毒をためていく……ハロウィンごろから、とくにひどくなりました。ママは強い人、だけどもう限界です」
ハロウィン、うわさ……まさか。
「わ、わたしがいけなかったのかな。わたしが、トト■の中の人は女だって、バラしたから」
だか着ぐるみ着てて正体わからないのに、ニンジンさんだってみんな知って……根も葉もない悪口を言うようになったの? かくしたかったから着ていたのに、わたしが言ったから。
じゃあ、ニンジンさんを苦しめてる悪意の毒は、わ、わたしのせい……!
おこられて、きらわれて当然だ。ちょう本人だもん…。
「ニンジンさんに、わたしの声もうとどかないかな?」
ぼろぼろ、なみだがこぼれます。
わたしがわるい子だから、いらないことを言ったから、ニンジンさんは遠くに行っちゃうんだ…。
「そんなことないです! ママはお姉ちゃんのことをぜったいにせめたりしません。ただ、あの男の作った傷は、あの男しかなおせないってことです!」
石の薬研くんは言いました。
「鈍感で節穴な男ですけど、彼がママとすごした十年は本物です。彼ならきっと、ママが一番ほしい言葉を言ってくれると信じてます」
だって、ゴリラセンパイはほんっとにドンカンでバカでフシアナなんだよ。十年もすぐそばにいて
いまだに女だって気がつかないんだよ。
あれだけうわさになってるのに、なーんにも言ってこないって、全然うわさを信じてないってことだよね。何を言われても、自分の信じたいことだけ信じて真実を見ようとしてないんだよ。
石の薬研くんは、わたしの手をつかんで、ひっしにせまってきました。
「そうです。だからお姉ちゃん、お願い! あの男に真実を教えて」
え、えええっ。わたしが?
・・・・
・・・
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先日予告したとおり、今日入院しました。手術は金曜日……無事に終わったら続きをアップします。┣¨キ((p>ω<q))┣¨キ
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2023-05-24 20:30
Comments (5)
ひまちゃん、頑張って!
更新してお疲れさまでした。どうかゆっくり休んでください。 ひまわりちゃん、どうか人参お姉さまの心声と彼女の真実を彼女の先輩の花車様に伝えてください。
更新お疲れ様です💦噂を「武器」として使うのは、こういうことですよ…ひまちゃんも今度のことでちゃんと勉強になれるはず… 人間が作った傷は人間しか治れないってことです。ニンジンさんは彼女の刀剣男士を愛してますし、信じてないわけではありませんが、みんな息子ポジなので(;´Д`)