幸運EX+++バディによる哭倉村RTA㊸
地殻変動を起こしたかのように、穴蔵が激しく揺れる。
一向に目を覚まさない夫を抱いたまま、庚子の心は不思議と凪いでいた。
「母様!」
「庚子様、早く此方へ!」
時弥と水木が呼んでいる。
しかし庚子は立ち上がらなかった。
「水木様、時弥を連れて行ってください」
「何を仰いますか!」
「夫を置いて行けません」
そこで初めて長田の異変に気づいたらしく、水木たちが息をのんだ。
「長田さんは、そんなこと望んでは、」
水木の言葉を遮るように、いくつもの大きな瓦礫が落下した。
そのまま長田夫婦と水木たちを分断する。
「嫌だ、母様! 父様!」
瓦礫の向こうから、時弥の涙声が聞こえた。
――幽霊族の男は妻で両手が塞がり、水木は先ほど気絶した沙代を担ぎ時弥を片手で留めている。
この壁を越えられる者はいない。
血桜?周囲の水も溢れ、その水位はどんどん上がっていく。
庚子は長田を抱きしめたまま、時弥に笑顔を向けた。
「寝坊助の父様を起こしたら、きっと追いかけるわ。だから先に行きなさい」
「嫌だ、そんなこと言わないでよ! 釣瓶火さん、この岩をどけて! お願い!」
『……………………』
「時ちゃん! ここは水が増えすぎた! 釣瓶火さんはこれ以上ここには留まれないんじゃ!」
満身創痍のゲゲ郎が時弥を諭す。
炎の魔人は輪郭が霞み始める。
「釣瓶火さん、貴方は地上へ向かってくれ。そこで生き残っている者がいれば、一人でも多く救ってはくれぬか?」
『……………………』
釣瓶火は心なしか悔しそうな表情を浮かべると≪ボッ!≫と音を立てて消えた。ゲゲ郎の言葉に了承したらしい。
時弥は絶望に顔を歪ませるが、水位は既に時弥の肩まで上がっていた。時間はもう無い。
水木は唇を噛みながら、時弥を脇に抱える。
「離して水木さん!!」
「離さん! 君に一生恨まれることになっても、ここから君を連れ出す!」
時弥は暴れていたが、庚子はむしろ安心した。
(時弥……いつの間にか、あんなに元気になったのね)
「時弥をお願いします。……時弥、生まれてきてくれて、ありがとう。愛してるわ」
「母様―――――!!」
……………………。
…………………………………………。
時弥たちの背を見送り、庚子はそっと長田に口づけを落とす。
「幻ちゃん……愛してる」
無意識の内に庚子の霊力が、長田に流れ込む。
その一瞬、庚子の霊力は沙代を、否、歴代当主ですら凌駕した。
二人が完全に水没したとき――長田の瞼が動く。
(としこ……さま……)
長田は庚子が無意識に行った、一生に一度きり、秘術中の秘術で息を吹き返す。
水中で目覚めたために溺れかけたが、何とか気を失っている庚子を抱え込み体勢を立て直した。
(息が持たない……せめて庚子様だけでも……!)
再び死を覚悟した時、どこからともなく声がする。
『――おうおう! あんたら三途の川渡るには早いんじゃねえの!? 人生これからだろう!』
『遅くなって悪かったなあ! 恩を返しにきたぜ、長田の旦那!』
(誰だ……しかし、この声――昔、聞いたことがある)
暗い水の中で、それはトンビのように素早く飛んでいた。
====================
庚子さんって笑うと学生の時と同じ顔になるんだよね……凄く自愛に満ちた笑顔。
演出も相まって助からないんじゃないかとハラハラしました!
そして彼の再登場です。
一向に目を覚まさない夫を抱いたまま、庚子の心は不思議と凪いでいた。
「母様!」
「庚子様、早く此方へ!」
時弥と水木が呼んでいる。
しかし庚子は立ち上がらなかった。
「水木様、時弥を連れて行ってください」
「何を仰いますか!」
「夫を置いて行けません」
そこで初めて長田の異変に気づいたらしく、水木たちが息をのんだ。
「長田さんは、そんなこと望んでは、」
水木の言葉を遮るように、いくつもの大きな瓦礫が落下した。
そのまま長田夫婦と水木たちを分断する。
「嫌だ、母様! 父様!」
瓦礫の向こうから、時弥の涙声が聞こえた。
――幽霊族の男は妻で両手が塞がり、水木は先ほど気絶した沙代を担ぎ時弥を片手で留めている。
この壁を越えられる者はいない。
血桜?周囲の水も溢れ、その水位はどんどん上がっていく。
庚子は長田を抱きしめたまま、時弥に笑顔を向けた。
「寝坊助の父様を起こしたら、きっと追いかけるわ。だから先に行きなさい」
「嫌だ、そんなこと言わないでよ! 釣瓶火さん、この岩をどけて! お願い!」
『……………………』
「時ちゃん! ここは水が増えすぎた! 釣瓶火さんはこれ以上ここには留まれないんじゃ!」
満身創痍のゲゲ郎が時弥を諭す。
炎の魔人は輪郭が霞み始める。
「釣瓶火さん、貴方は地上へ向かってくれ。そこで生き残っている者がいれば、一人でも多く救ってはくれぬか?」
『……………………』
釣瓶火は心なしか悔しそうな表情を浮かべると≪ボッ!≫と音を立てて消えた。ゲゲ郎の言葉に了承したらしい。
時弥は絶望に顔を歪ませるが、水位は既に時弥の肩まで上がっていた。時間はもう無い。
水木は唇を噛みながら、時弥を脇に抱える。
「離して水木さん!!」
「離さん! 君に一生恨まれることになっても、ここから君を連れ出す!」
時弥は暴れていたが、庚子はむしろ安心した。
(時弥……いつの間にか、あんなに元気になったのね)
「時弥をお願いします。……時弥、生まれてきてくれて、ありがとう。愛してるわ」
「母様―――――!!」
……………………。
…………………………………………。
時弥たちの背を見送り、庚子はそっと長田に口づけを落とす。
「幻ちゃん……愛してる」
無意識の内に庚子の霊力が、長田に流れ込む。
その一瞬、庚子の霊力は沙代を、否、歴代当主ですら凌駕した。
二人が完全に水没したとき――長田の瞼が動く。
(としこ……さま……)
長田は庚子が無意識に行った、一生に一度きり、秘術中の秘術で息を吹き返す。
水中で目覚めたために溺れかけたが、何とか気を失っている庚子を抱え込み体勢を立て直した。
(息が持たない……せめて庚子様だけでも……!)
再び死を覚悟した時、どこからともなく声がする。
『――おうおう! あんたら三途の川渡るには早いんじゃねえの!? 人生これからだろう!』
『遅くなって悪かったなあ! 恩を返しにきたぜ、長田の旦那!』
(誰だ……しかし、この声――昔、聞いたことがある)
暗い水の中で、それはトンビのように素早く飛んでいた。
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庚子さんって笑うと学生の時と同じ顔になるんだよね……凄く自愛に満ちた笑顔。
演出も相まって助からないんじゃないかとハラハラしました!
そして彼の再登場です。
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幸運EX+++バディによる哭倉村RTA
naguramuraa-ruthi-e-
もうこれが公式でいいよ
moukoregakoushikideiiyo
778
986
24564
2024-04-28 00:14
Comments (24)
このシーンほんとに泣けた(幻覚)
長田(……、私は龍賀時貞の命令を破ってまで、この方々を助けて良かった。……庚子さんだけでも、助かってほしい。……意識が朦朧としてきました、あとは頼みます。)
View Replies貰った。河童のスイマー『坊っちゃん、有り難う。この恩は、君が困った時に助けに行くから、約束だよ?』そう、河童は助けて貰った恩は必ず返すという妖怪の掟があった。
河童のスイマー『長田さん、貴方には小さい時に助けていただきました。御恩に報いる為に、馳せ参じました。』河童は、幼い時仲間とはぐれ、村に迷い込み腹を空かせ倒れていた時、幼い長田が『河童さん大丈夫?家で取れた胡瓜と僕のお弁当を分けてあげるね。』と採れたての胡瓜と少し塩っぱいおにぎりを
幽霊族のご先祖『長田さん、貴方のおかげで私達幽霊族達は、助かりました。…本当に有り難う。』龍賀時貞のせいで、血液を沢山抜かれ、死んだ同胞達も少なくない。彼…長田に代わってから、助かる幽霊族の同胞も増えて…絶滅危惧を免れた。…龍賀乙米のレバニラ炒め責め以外。……正直、きつかった…。
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