怪獣姫エロワーズ5(改稿)
注 ごめんなさい、ボツ稿をアップしてしまったので、改めてこちらを読んでいただきますようお願いいたします。
嘘のような平和。
それが、自分と妹の周りに無理矢理にたちこめられている。
…それが、今のサリナの実感なのです。
自分と、三流監督みなみ獣児とが暮らしているマンション。
そこに実父・獅子原佐満が作った兄妹であるジュストとエロワーズが住み込んで三か月になります。
そしてここには、なぜかサリナとも顔馴染みの小料理屋の女将・夕貴も頻繁に出入りします。
…こんなスキャンダラスな舞台でありながら、絵に描いたような平和な毎日がサリナの周りにはあります。
おかしすぎる。
サリナは容姿よりも演技力で認められ始めた「女優」ですし、父は日本では知名度の低い監督に過ぎません。
友人である全国的アイドル、冴木セイジとは一時は大いに関係を勘ぐられましたが、
今は嘘のように「ただの友人」に落ち着いています。
サ「おかしすぎるぅ!」
ジュスト「それは、おまえという存在自体が色モノだからだろう」
サ「ちょ、ちょっとお兄さん。テレパシーなんかいきなり使うとは…💦」
ジュ「気のせいだ。あした三人で買い物に出よう。妹も気晴らしが必要だろうし」
サ「あ、あしたは授業に出ないと」
ジュ「妹の健康のほうが大事だ。いざとなればオホ猫にノートを頼めばいい」
サ「…おにーさん、そんな使い方を今まで…」
ジュ「早く寝ろよ」
表通りは、いつになく人に溢れています。
エロワーズ「お兄さま!お姉さまぁっ!」
胸にスカーフを巻いたシックなツーピースのエロワーズ。その両手には、イカ焼きが三本握られています。
サ「えろちゃん!お祭りじゃないんだから…」
エ「お姉さま。イカはお嫌い?」エロワーズの瞳に丸い涙が膨れ上がってきます。
サ「そ、そうじゃなくて…」
ジュ「有難うエロワーズ!酷いお姉さんだなあ、うん?」
なんつーヒデェ野郎だ、と心中で毒づきながら、青筋を立てた笑顔でサリナも妹を迎えます。
エ「はい、お兄さま!お姉さまも召し上がってね」
エロワーズはサリナにも笑顔でイカを向けます。サリナも、スケベ親父の心中が理解できたように思えたのでした。
その不意をついて、サクッと擦過音が腕を貫き、ジュストはイカを落とします。
✖「ふふ…油断大敵火がボウボウってなァ…」
サ「…水島ァ!」
水島「イカにも。アニキの仇ってワケでなあ…」街路樹の向こうから、ボウガンを掲げて水島の弟が現われました。
サ「どこまでやる気だよ!人生投げてんのか」
水「そうかもなァ…相手が獅子原ならここまでの気は起きなかったろうな…」
不思議に、サリナには言い返すことばが見当たりませんでした。
エロワーズは、その美貌のみで罰せられてもおかしくない、そんな娘に思えてしまったのでした…サリナには。
ジュストは、唇を舐めニヤリとしました。
ジュ「いいなあ…兄弟揃って美に殉じるか」
エ「お、お兄さま!?」
ジュ「だがな…そういう奴にこそ地獄行きの資格があるのだ。最もみじめで、最もみすぼらしい地獄へな!」
言うなり、ジュストは真一文字に腕を水島に突きつけました。
爪。
真紅の一閃が水島の喉笛をつらぬきました。
エ「きゃああああああああああああああっ!」
サ「…水島…?ううん兄さん、何をしたの!」
ジュ「ふん、安心しろ。汚物処理だけで牢屋に放り込まれてたまるか」
倒れたままで水島はつぶやきました。「判ってるじゃねえか、真打ちを見ずに退場できるか。呼べよ、そこの子供!」
サリナは混乱で気がおかしくなりそうでした。
ほんの少し前まで、ここは常識の通じるただの日本の街だったはずです。
エロワーズとジュスト。このふたりが冗談も言えない世の中に叩き込んでくれたのか、との思いが渦を巻くのでした。
サ「えろちゃん!お願い、判ってるの?なんなのよこれェッ!」
でも、そこにいたのはエロワーズではありませんでした。
激しく体をのたうたせながら、黒く弾力のある首で衣服を自ら剥ぎ取ってゆく「なにか」。
それがさっきまで横にいた娘だ、と気づかせるのは、長くロールした金髪のみでした。
その海獣のような体躯に、紅く血の色を帯びた瞳と、鋭い牙をもつ口とがどこか猫のようなイメージを醸し出す頭。
それは、獅子原佐満の映画に現われた「怪獣」だったのです。
呪い…思えば、それはなんと当を得たことばだったのでしょう!
つづく
嘘のような平和。
それが、自分と妹の周りに無理矢理にたちこめられている。
…それが、今のサリナの実感なのです。
自分と、三流監督みなみ獣児とが暮らしているマンション。
そこに実父・獅子原佐満が作った兄妹であるジュストとエロワーズが住み込んで三か月になります。
そしてここには、なぜかサリナとも顔馴染みの小料理屋の女将・夕貴も頻繁に出入りします。
…こんなスキャンダラスな舞台でありながら、絵に描いたような平和な毎日がサリナの周りにはあります。
おかしすぎる。
サリナは容姿よりも演技力で認められ始めた「女優」ですし、父は日本では知名度の低い監督に過ぎません。
友人である全国的アイドル、冴木セイジとは一時は大いに関係を勘ぐられましたが、
今は嘘のように「ただの友人」に落ち着いています。
サ「おかしすぎるぅ!」
ジュスト「それは、おまえという存在自体が色モノだからだろう」
サ「ちょ、ちょっとお兄さん。テレパシーなんかいきなり使うとは…💦」
ジュ「気のせいだ。あした三人で買い物に出よう。妹も気晴らしが必要だろうし」
サ「あ、あしたは授業に出ないと」
ジュ「妹の健康のほうが大事だ。いざとなればオホ猫にノートを頼めばいい」
サ「…おにーさん、そんな使い方を今まで…」
ジュ「早く寝ろよ」
表通りは、いつになく人に溢れています。
エロワーズ「お兄さま!お姉さまぁっ!」
胸にスカーフを巻いたシックなツーピースのエロワーズ。その両手には、イカ焼きが三本握られています。
サ「えろちゃん!お祭りじゃないんだから…」
エ「お姉さま。イカはお嫌い?」エロワーズの瞳に丸い涙が膨れ上がってきます。
サ「そ、そうじゃなくて…」
ジュ「有難うエロワーズ!酷いお姉さんだなあ、うん?」
なんつーヒデェ野郎だ、と心中で毒づきながら、青筋を立てた笑顔でサリナも妹を迎えます。
エ「はい、お兄さま!お姉さまも召し上がってね」
エロワーズはサリナにも笑顔でイカを向けます。サリナも、スケベ親父の心中が理解できたように思えたのでした。
その不意をついて、サクッと擦過音が腕を貫き、ジュストはイカを落とします。
✖「ふふ…油断大敵火がボウボウってなァ…」
サ「…水島ァ!」
水島「イカにも。アニキの仇ってワケでなあ…」街路樹の向こうから、ボウガンを掲げて水島の弟が現われました。
サ「どこまでやる気だよ!人生投げてんのか」
水「そうかもなァ…相手が獅子原ならここまでの気は起きなかったろうな…」
不思議に、サリナには言い返すことばが見当たりませんでした。
エロワーズは、その美貌のみで罰せられてもおかしくない、そんな娘に思えてしまったのでした…サリナには。
ジュストは、唇を舐めニヤリとしました。
ジュ「いいなあ…兄弟揃って美に殉じるか」
エ「お、お兄さま!?」
ジュ「だがな…そういう奴にこそ地獄行きの資格があるのだ。最もみじめで、最もみすぼらしい地獄へな!」
言うなり、ジュストは真一文字に腕を水島に突きつけました。
爪。
真紅の一閃が水島の喉笛をつらぬきました。
エ「きゃああああああああああああああっ!」
サ「…水島…?ううん兄さん、何をしたの!」
ジュ「ふん、安心しろ。汚物処理だけで牢屋に放り込まれてたまるか」
倒れたままで水島はつぶやきました。「判ってるじゃねえか、真打ちを見ずに退場できるか。呼べよ、そこの子供!」
サリナは混乱で気がおかしくなりそうでした。
ほんの少し前まで、ここは常識の通じるただの日本の街だったはずです。
エロワーズとジュスト。このふたりが冗談も言えない世の中に叩き込んでくれたのか、との思いが渦を巻くのでした。
サ「えろちゃん!お願い、判ってるの?なんなのよこれェッ!」
でも、そこにいたのはエロワーズではありませんでした。
激しく体をのたうたせながら、黒く弾力のある首で衣服を自ら剥ぎ取ってゆく「なにか」。
それがさっきまで横にいた娘だ、と気づかせるのは、長くロールした金髪のみでした。
その海獣のような体躯に、紅く血の色を帯びた瞳と、鋭い牙をもつ口とがどこか猫のようなイメージを醸し出す頭。
それは、獅子原佐満の映画に現われた「怪獣」だったのです。
呪い…思えば、それはなんと当を得たことばだったのでしょう!
つづく
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2024-10-17 17:29
Comments (29)
オホーツク猫って、私より勉強ができたのですね
和やかな前半部から一転!後半部は悪夢そのものが形を持ったかのような展開ですね
View Repliesみなみ獣児ってすごい名前ですね。今回、平和な筈の日本が舞台という事ですが穏やかでないですね。エロワーズさんは怪獣にされるし水島さん喉笛って、普通なら亡くなってます。どういう展開になるのか見ものですね。
View Replies>エロワーズの瞳に丸い涙が… こちらが悪く無くてもつい「ごめんね」と言わしめる、美少女の涙の破壊力☆ 桃花「良いわね。私もサリナさんにお願いする時にやってみようかしら?」 サリナ「でもって、後の毒舌で台無しになる所がワンセットなのよね~」 果してどうなる事やら…です☆
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