Project "Blue sphere" 13
海洋庁の職員の朝は早い。明け方の空に、月と、建造中のオービタル・リングの輝きがまだはっきりと見える間からそれぞれの持ち場で準備が始まる。少女はお気に入りの桟橋まで仕事用具一式を持ってくると、ひんやりと心地よい潮風に目を細めつつ、粛々と出勤の準備を始める。ワーキング・ドレスが少女を認識すると、各部位の発光体が淡い光を強め、通常モードを示す薄黄緑色になって常灯する。この発光体は生物由来の技術、ホタルをヒントに開発されたネイチャーテクノロジーの一種で、少女と触れ合う部分のわずかな摩擦によってわずかながら常に発電する。そのため、少女がじっとしていると光はやや弱まり、行動すると光が強まる。少女は胸の谷間にパーツを埋めると、ものの数秒でピッと短い電子音と共にせり上がり、ディスプレイが目の前で開き、少女が健康である事を告げる。傍らのAIブイがコロコロと転がり、あーとかうーとか電子音を発している。スリープから復帰したAIブイも、人間同様に調子を出すまでに少し時間がかかるのだ。お決まりのウォーミングアップが終わると、AIブイは少女の調子を知るために挨拶にはじまり、世間話を始める。今日の内容は、7月7日、七夕の事だった。「本当にオリヒメとヒコボシは宇宙で会っているのですか?」目をぱちくりさせてAIブイが尋ねる。「ホントよ。1年に1度だけ、星の川をまたいで会うの。素敵よね」「1年に1度。超・遠距離恋愛ですね。その間の通信手段はなんなのです?文献によると、電波などない太古から続くとあります」「バカねぇ、流れ星よ。空にはいっぱい星があるんだから、星に描いて投げて寄越してるのよ。今でもきっとそう。時々失敗したのが地面に落ちちゃうみたいだけど、燃えて無くなっちゃうから安心ね」「なるほど・・・流れ星にはそんなエピソードがあったのですね。オービタルリング『アマノガワ』にも、いずれオリヒメとヒコボシが住まうようになるのでしょうか?」AIブイが夜空に浮かぶ一段と濃い青色のラインを見つめて尋ねる。何枚もの太陽光パネルや作業光が煌く事から、アマノガワと名付けられたリング。「ええ、毎日顔を合わせられる2人が住めるようになるわ。あたしが生きてる間はちょっと難しそうだけど。あたしたちは、この下ね」少女が目配せした海は、夜空を反射して、一面広大な星の海となっていた。「さ、行きましょ。ヒコボシさん」「アイアイ。織姫」
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2011-07-08 06:05
Comments (6)
好き…
View Replies>mabaruさん ありがとうございます!ダボダボの装備がぴったりフィッティングするって凄くトキメキますよね!
>たまーゐくん うふふ、1000文字ぴったりに無理矢理いれてるから、かなり怪しい部分があるけど!露出は多い事に越した事なし!ショートカットは行動的でいいよね。ロングとかも幻想的でいいな~
言葉にできない良さがありますねぇ・・・。カチッ、プシューって音と共に装甲がフイッティングされる様が目に浮かびますp(´u`q)
す、すごいですー!!キャプションでここまでSF感を出せるなんて!そして露出度がすごい!オービタルリングはコロニーの一種でしょうか。SFにはショートカットと思うのは私だけでしょうか。。