ホーリーメイデンズ 第弐夜「ひとりぼっちの女の子(5)」
・前のお話>illust/59427460
・次のお話>illust/59454958
・第弐夜冒頭>illust/59403174
・小説版>https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3205851
そして放課後、屋上にて。
ふうわりと茜雲が漂う空の下、春花は鞄から翡翠色のステッキを取り出す。
「はい、これが私のオーヌサステッキです」
「春花さんもこれを持ってたんだ……朝の口ぶりから、関係者だとは思っていたけど」
小さな驚きを見せる冬雪に対し、春花は口元に手を当てて微笑する。
「ふふ。冬雪君は変身した私と、一度会っていますよ?」
「え? ……あっ」
そうだ。最初、生首少女に襲われた時、夏月と一緒にいた緑色の巫女。
あの時は暗さと恐怖心でよくわからなかったが、今思えば声がそっくりではないか。
「そう、私や夏月ちゃんと同じく、冬雪君は選ばれたのです。陰たるアヤカシを陽の力で祓う巫女『ホーリーメイデンズ』として」
「ほーりーめいでんず?」
突如飛び出したメルヘンチックな単語に、冬雪は思わず顔をしかめる。
「あはは、そりゃあ嫌だよね。あたしもそのネーミング、なんとかならないかって思ったもん」
夏月は頭の後ろに腕を組みながら苦笑した。
「私は格好いいと思うんですけどね……まぁ、いいです」
春花は説明を続ける。
「人々が噂に対して抱く恐怖心。それらが凝り固まり、生まれた魔物。それが『アヤカシ』です」
「あんたも見たでしょ? あの生首も怪物も、誰かさんが振りまいた無責任な噂から生まれたわけ!」
吐き捨てるように、夏月は声を荒げる。恐らく、三四郎のことを言っているのだろう。
それはともかく、冬雪は昨日のマッドガッサーを思い出す。山高帽を被った、類人猿を思わせる醜悪な姿。
思わず、戦慄してしまう。あんな化け物が、たわいもない噂から生まれたというのか。
「それに唯一対抗できるのが、古来より存在する大自然の精霊『四神』の力を宿す巫女『ホーリーメイデンズ』なのです。私が青龍の風、夏月ちゃんが朱雀の炎を操れるように、冬雪君も玄武から水の力を得たはずです」
「はずです、って言われても……」
まるで、御伽噺のような途方もない話。我が身に起きていることなのに、頭が受け入れられない。
「メイデンズは、聖獣に選ばれた人間がなるそうです。どういう基準で選んでるのかはわかりませんが、巫女っていうだけあって、女の子しかなれないみたいです」
「ということは……?」
春花はうなずく。
「ええ。恐らく冬雪君が性転換したのは、メイデンズに選ばれたためでしょう」
「そんな」
そんな馬鹿な。
許容量以上の情報を与えられた上、あまりにも理不尽な事実を告げられ、冬雪は口にすべき言葉が見つからない。
なんだか、気分が悪くなってきた。
「……ごめん。僕、ちょっと顔洗ってくる」
めまいがするような現実に直面し、冬雪はふらふらと、屋上を後にしようとする。
「ちょっと、あんた。どっちのトイレに行こうとしてるの?」
「え?」
「だからさ。男子と女子、どっちのトイレ?」
「あ、そうか」
夏月に指摘され、はたと冬雪は気づく。そうだ、今の自分は女子なのだ。
勿論、女子トイレは絶対嫌。かといって、セーラー服姿で男子トイレに入るのも、抵抗がある。
「仕方ないなぁ。あたしが外で見張っておいてあげるから、行きなよ。男子トイレの方に」
「ごめん、夏月。なんだか迷惑かけっぱなしで」
「気にしない気にしない! あんたとあたしの仲だしさ!」
朗らかな声色で、夏月は笑う。かくして二人は連れ立って、階下のトイレへと向かうのであった。
―― ねえねえ、知ってる? トイレの花子さんの噂?
―― 知ってる! 紅い服を着た、女の子の幽霊でしょ!
――「赤い紙と青い紙のどっちがいい?」って聞いてくるんだって~。
―― 赤い紙を選ぶと血塗れにされて、青い紙を選ぶと首を絞められるの。
―― この前もトイレに行った男子生徒が、一人行方不明になったらしいよ?
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・第弐夜冒頭>illust/59403174
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そして放課後、屋上にて。
ふうわりと茜雲が漂う空の下、春花は鞄から翡翠色のステッキを取り出す。
「はい、これが私のオーヌサステッキです」
「春花さんもこれを持ってたんだ……朝の口ぶりから、関係者だとは思っていたけど」
小さな驚きを見せる冬雪に対し、春花は口元に手を当てて微笑する。
「ふふ。冬雪君は変身した私と、一度会っていますよ?」
「え? ……あっ」
そうだ。最初、生首少女に襲われた時、夏月と一緒にいた緑色の巫女。
あの時は暗さと恐怖心でよくわからなかったが、今思えば声がそっくりではないか。
「そう、私や夏月ちゃんと同じく、冬雪君は選ばれたのです。陰たるアヤカシを陽の力で祓う巫女『ホーリーメイデンズ』として」
「ほーりーめいでんず?」
突如飛び出したメルヘンチックな単語に、冬雪は思わず顔をしかめる。
「あはは、そりゃあ嫌だよね。あたしもそのネーミング、なんとかならないかって思ったもん」
夏月は頭の後ろに腕を組みながら苦笑した。
「私は格好いいと思うんですけどね……まぁ、いいです」
春花は説明を続ける。
「人々が噂に対して抱く恐怖心。それらが凝り固まり、生まれた魔物。それが『アヤカシ』です」
「あんたも見たでしょ? あの生首も怪物も、誰かさんが振りまいた無責任な噂から生まれたわけ!」
吐き捨てるように、夏月は声を荒げる。恐らく、三四郎のことを言っているのだろう。
それはともかく、冬雪は昨日のマッドガッサーを思い出す。山高帽を被った、類人猿を思わせる醜悪な姿。
思わず、戦慄してしまう。あんな化け物が、たわいもない噂から生まれたというのか。
「それに唯一対抗できるのが、古来より存在する大自然の精霊『四神』の力を宿す巫女『ホーリーメイデンズ』なのです。私が青龍の風、夏月ちゃんが朱雀の炎を操れるように、冬雪君も玄武から水の力を得たはずです」
「はずです、って言われても……」
まるで、御伽噺のような途方もない話。我が身に起きていることなのに、頭が受け入れられない。
「メイデンズは、聖獣に選ばれた人間がなるそうです。どういう基準で選んでるのかはわかりませんが、巫女っていうだけあって、女の子しかなれないみたいです」
「ということは……?」
春花はうなずく。
「ええ。恐らく冬雪君が性転換したのは、メイデンズに選ばれたためでしょう」
「そんな」
そんな馬鹿な。
許容量以上の情報を与えられた上、あまりにも理不尽な事実を告げられ、冬雪は口にすべき言葉が見つからない。
なんだか、気分が悪くなってきた。
「……ごめん。僕、ちょっと顔洗ってくる」
めまいがするような現実に直面し、冬雪はふらふらと、屋上を後にしようとする。
「ちょっと、あんた。どっちのトイレに行こうとしてるの?」
「え?」
「だからさ。男子と女子、どっちのトイレ?」
「あ、そうか」
夏月に指摘され、はたと冬雪は気づく。そうだ、今の自分は女子なのだ。
勿論、女子トイレは絶対嫌。かといって、セーラー服姿で男子トイレに入るのも、抵抗がある。
「仕方ないなぁ。あたしが外で見張っておいてあげるから、行きなよ。男子トイレの方に」
「ごめん、夏月。なんだか迷惑かけっぱなしで」
「気にしない気にしない! あんたとあたしの仲だしさ!」
朗らかな声色で、夏月は笑う。かくして二人は連れ立って、階下のトイレへと向かうのであった。
―― ねえねえ、知ってる? トイレの花子さんの噂?
―― 知ってる! 紅い服を着た、女の子の幽霊でしょ!
――「赤い紙と青い紙のどっちがいい?」って聞いてくるんだって~。
―― 赤い紙を選ぶと血塗れにされて、青い紙を選ぶと首を絞められるの。
―― この前もトイレに行った男子生徒が、一人行方不明になったらしいよ?
ホーリーメイデンズ
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変身ヒロイン
transformable heroines
都市伝説
urban legend
TSF
性転換
sex change
トイレの花子さん
Toire no Hanako-san
オリジナル
original
27
24
2401
2016-10-12 23:14
Comments (8)
周りのが順応早いw
View Replies何故かメイデンズに選ばれてしまったから、性転換してしまった…なんという理不尽。そして、そろそろ元男子中学生の登場が近いですね。
View Repliesそうこうしてる内にまた新たな波乱が…
冬雪君には当分安息は訪れそうにありませんね
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