【PFSOZ】目も綾な幕間について【竜餐騎士団ハイドラ】
風使いシナトは、手元のジュースを飲もうと決心した。
その果汁は、シナトの知らない果物のものだった。瓶のラベルの解説曰く、夜の温かな灯りの下で育つ果実だという。
透明な瓶の中でたゆたうオレンジ色の液体は、なるほど確かに灯りを目一杯吸い込んだような優しい色合いをしており、シナトはこのジュースを鑑賞用にしばらく保管するべきか、悩んでいたのだった。
(この色の刺繍糸も欲しいな……)
決意して一口飲めば、冷たく芳醇な果汁が喉を伝って体に染み入ってくる。色とりどりの紙吹雪と日差しの合間に、瓶から流れ落ちる水滴が舞う。
日差しに瓶を透かしてみる。美しい果汁は、当然減っている。シナトの中で「今、飲んでよかった」という気持ちと「惜しいことをした」という気持ちがせめぎ合っていた。
今日は祭りだ。下界の祭事には何度か出くわしたことはあったが、これほどの物量と人が行き交う催しは初めてだった。
通行人の波に紛れて、同行者のラルフが歩み寄ってくる。
「全く、すごい人だな」小さな包みを大事そうに抱え直し、ラルフはぼやくように言う。「ちょっと目を離した隙に、随分祭りを楽しんでいたようだね?」
「ああ……」
ラルフが露店で小さな笛を見つけてシナトから離れたのが数十分前。その間、本当に色々なことがあった。
シナトは思い返しながら、口を開く。
「赤ちゃんの靴を届けて、困ってたお婆さんの道案内して、露店の変な客を追い払ったよ」
「大冒険だったな」ラルフは笑った。「それはどうしたんだ?」
ラルフの視線の先には、シナトに抱えられた大きなぬいぐるみがあった。当然の疑問だろうとシナトは内心思う。
「これは露店の景品。変な客を追い払ったお礼だって」
「何の生き物だろう?」
「わからない……」シナトは首を振って、飲みかけのジュースを持ち上げる。「このジュースは、赤ちゃんの靴を届けたとき、親がくれた」
「じゃあ、その花飾りはお婆さんのお礼だ」
「そう」
シナトがジュースをラルフに差し出すと、ラルフはありがとうと嬉しそうにそれを受け取った。戦闘ほどではないものの、祭事の熱量もすさまじい。喉が渇いていたのだろうとシナトは思った。
「おいしい」ラルフは目を輝かせた。
「だろ? どこで買ったものか聞けばよかった」
「せっかくの祭りなのに、シナトはまだ買い物してないしね」
言われて、シナトは目を丸くした。確かにその通りだ。
何ともなしに、人の波に沿って2人は歩き出す。ハイドラに入団する前、ひと月ほどこうして二人旅をしていた時間があった。それは不思議と、故郷で過ごした16年という月日以上に、鮮やかに感じられたのだった。
シナトは、白鯨守の王となるために生まれ、生きてきた。竜神の娘の魂を持つと告げられてからは、その立場で、課せられる役目も振るえる力もきっとあるだろうとシナトは思う。
けれど、その道を外れても、こうして楽しく生きていける。
生きていけてしまうのだ。
「意外と楽しくて、困ってるんだよなあ……」
「よかったじゃないか」ラルフは屈託なく笑う。
「そうなんだけどさ」
シナトは、ラルフの勘違いを訂正しなかった。
―――
▷PFSOZアイテム【変なぬいぐるみ】
風使いシナトが、露店の変な客を追い払った際、お礼としてもらった変な動物(?)のぬいぐるみ。大きさは手乗りサイズから一抱えほどのサイズ(※1枚目イラスト参考)まで。
たくさんもらったので、欲しい人はシナトから受け取ってください。
特殊な効果などは特にありませんが、お腹を軽く押すと「ぷい~」と音が鳴ります。
―――
2枚目以降は、竜餐騎士団ハイドラ(illust/102044005)の団員さんたちとのちょっとした小ネタ(FA)です。
―――
自宅
副団長シナト illust/101965808
剣と魔法の大会にも顔を出しつつ、豊穣の祭典も楽しんでいるようです。
竜餐騎士団ハイドラ illust/102044005
―――
お借りしました。ありがとうございました!(敬称略)
▷副団長ラルフ illust/101977050
▷エリック illust/102177836
▷スヴェル illust/102731922
▷エストレイラ illust/102731544
クッキーありがとうございました~!!とても嬉しいです!!!!
その果汁は、シナトの知らない果物のものだった。瓶のラベルの解説曰く、夜の温かな灯りの下で育つ果実だという。
透明な瓶の中でたゆたうオレンジ色の液体は、なるほど確かに灯りを目一杯吸い込んだような優しい色合いをしており、シナトはこのジュースを鑑賞用にしばらく保管するべきか、悩んでいたのだった。
(この色の刺繍糸も欲しいな……)
決意して一口飲めば、冷たく芳醇な果汁が喉を伝って体に染み入ってくる。色とりどりの紙吹雪と日差しの合間に、瓶から流れ落ちる水滴が舞う。
日差しに瓶を透かしてみる。美しい果汁は、当然減っている。シナトの中で「今、飲んでよかった」という気持ちと「惜しいことをした」という気持ちがせめぎ合っていた。
今日は祭りだ。下界の祭事には何度か出くわしたことはあったが、これほどの物量と人が行き交う催しは初めてだった。
通行人の波に紛れて、同行者のラルフが歩み寄ってくる。
「全く、すごい人だな」小さな包みを大事そうに抱え直し、ラルフはぼやくように言う。「ちょっと目を離した隙に、随分祭りを楽しんでいたようだね?」
「ああ……」
ラルフが露店で小さな笛を見つけてシナトから離れたのが数十分前。その間、本当に色々なことがあった。
シナトは思い返しながら、口を開く。
「赤ちゃんの靴を届けて、困ってたお婆さんの道案内して、露店の変な客を追い払ったよ」
「大冒険だったな」ラルフは笑った。「それはどうしたんだ?」
ラルフの視線の先には、シナトに抱えられた大きなぬいぐるみがあった。当然の疑問だろうとシナトは内心思う。
「これは露店の景品。変な客を追い払ったお礼だって」
「何の生き物だろう?」
「わからない……」シナトは首を振って、飲みかけのジュースを持ち上げる。「このジュースは、赤ちゃんの靴を届けたとき、親がくれた」
「じゃあ、その花飾りはお婆さんのお礼だ」
「そう」
シナトがジュースをラルフに差し出すと、ラルフはありがとうと嬉しそうにそれを受け取った。戦闘ほどではないものの、祭事の熱量もすさまじい。喉が渇いていたのだろうとシナトは思った。
「おいしい」ラルフは目を輝かせた。
「だろ? どこで買ったものか聞けばよかった」
「せっかくの祭りなのに、シナトはまだ買い物してないしね」
言われて、シナトは目を丸くした。確かにその通りだ。
何ともなしに、人の波に沿って2人は歩き出す。ハイドラに入団する前、ひと月ほどこうして二人旅をしていた時間があった。それは不思議と、故郷で過ごした16年という月日以上に、鮮やかに感じられたのだった。
シナトは、白鯨守の王となるために生まれ、生きてきた。竜神の娘の魂を持つと告げられてからは、その立場で、課せられる役目も振るえる力もきっとあるだろうとシナトは思う。
けれど、その道を外れても、こうして楽しく生きていける。
生きていけてしまうのだ。
「意外と楽しくて、困ってるんだよなあ……」
「よかったじゃないか」ラルフは屈託なく笑う。
「そうなんだけどさ」
シナトは、ラルフの勘違いを訂正しなかった。
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▷PFSOZアイテム【変なぬいぐるみ】
風使いシナトが、露店の変な客を追い払った際、お礼としてもらった変な動物(?)のぬいぐるみ。大きさは手乗りサイズから一抱えほどのサイズ(※1枚目イラスト参考)まで。
たくさんもらったので、欲しい人はシナトから受け取ってください。
特殊な効果などは特にありませんが、お腹を軽く押すと「ぷい~」と音が鳴ります。
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2枚目以降は、竜餐騎士団ハイドラ(illust/102044005)の団員さんたちとのちょっとした小ネタ(FA)です。
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自宅
副団長シナト illust/101965808
剣と魔法の大会にも顔を出しつつ、豊穣の祭典も楽しんでいるようです。
竜餐騎士団ハイドラ illust/102044005
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お借りしました。ありがとうございました!(敬称略)
▷副団長ラルフ illust/101977050
▷エリック illust/102177836
▷スヴェル illust/102731922
▷エストレイラ illust/102731544
クッキーありがとうございました~!!とても嬉しいです!!!!
pixivファンタジアSOZ
pikushibufanntajiaseputa-obuzerarudexia
【竜餐騎士団ハイドラ】
オルギット団
orugittodann
豊穣の祭典
PFSOZアイテム
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2022-12-10 18:47
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