【PixZ】一方その頃・・・
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ズズズズッ……
.
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ママ……!
.
.
ドオオオォォォッ……ン……!!
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祢子女……!
.
.
「!!――」
何かが崩れるような轟音が、遠くで聞こえた気がした。
その合間を縫って、自分を呼ぶ声がしたような気がした。
祢子女はハッとして、俯けていた顔を上げた。
しんとした静寂の中、気のせいか……と思いながら、両眼を閉じてため息をつき、両の目頭を右手で押えた。
ここのところ、動物愛護団体への出張相談や活動の手伝いなど、事務所の外での仕事が相次いでいた。
多頭飼育崩壊や動物虐待の現場の調査、ペットロスに見舞われた飼い主たちのメンタルケアなど、その手の重い仕事が特に多かったこともあって、心身両面で疲労がたまっていた。
部屋は、白熱電灯で照らされていたが、切れかかっているのか光が弱まっており、室内は少し薄暗い。
そこは、マリスが自身が代表を務める会社と称する建物の一室で、マリスが関係者と話をしてくる間に待つようにと言われた場所だった。
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私が支援するある動物愛護団体には、動物保護という表向きの目的の陰に、妖怪を保護するという真の目的がある。
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そんな突拍子もないマリスの話を、祢子女はすんなりと信用した。
それは、マリスの話術が巧みだったからと言うだけではなかった。
実は、彼女自身、妖怪という存在には非常に近しかったからだ。
その一番の例が、彼女の姪の少女しぐれだ。
実は彼女は、人間ではない。齢10数年以上の時を経て妖怪化した猫、いわゆる猫又だ。
幼い頃、両親と逸れ迷い猫となったしぐれを、祢子女は保護し、飼い猫として育ててきた。
やがてしぐれは人間並みの知恵をつけると共に妖力を身に着けて猫の変化となったが、祢子女は恐れることも忌むこともなくそれを受け入れ、人間として面倒を見て、我が子のようにかわいがってきた。
なぜ忌むことも恐れることもないのか。
それは彼女の過去にも大きく関わることでもあったが、その件に関しては、彼女は今に至るまで一切他言したことはなかった。生きていくためには隠しておかなくてはならない秘密だったからだ。
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祢子女はブラウスの胸元に右手を入れ、首に下げていたひもをつまんで取り出した。
色褪せた革のひもの先端に、濃い赤紫色の美しい勾玉が括り付けられていた。
首飾りを取って掌に載せじっと凝視する。
透き通る石に透けて映されるかのように、脳裏にまざまざと過去の忌まわしい記憶が蘇る。
家族も仲間も、帰る場所すらも失った、あの日の悲劇。
思い出す度に悔恨と悲しみで胸が締め付けられた。
(父さま……母さま……)
憂いの色を顔に滲ませて、祢子女は勾玉を握りしめた。
その時。
ガチャッ……
「!!……」
部屋のドアが開く音に反応して握りしめていた右手を胸に引き寄せ、手の中にあるものをものを守ろうとするかのように身をすくめて、祢子女は驚きと共に、ドアの方に振り返った――。
〈続く〉
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というわけで、いよいよヒーローたちが敵陣へ殴りみという本格的な展開に突入した【PixZ- 八咲祢子女行方不明事件編】、こちらのイラスト(illust/80481606)の「一方その頃・・・」的なイラストです。
発端投げといてあまりストーリーの本筋に絡む作品を作れてなくて申し訳ないのですが、せっかく姐さんをめぐって展開するスリルとサスペンスあふれるストーリーを皆さんに盛り立てて頂いておりますので、マリスがでっちあげた「妖怪愛護団体」というキーワードに絡め、今回は祢子女の過去に隠された秘密・・・その一端をほんの少しですが、仄めかしてみました。
ドアを開けた先にいたのが誰なのかは、流れを拾って下さった方におまかせします。(本当は新キャラだしたいなと思ってるんですが、バトルものにマッチするような自キャラがいないというか、オリキャラ自体が姐さんとその関連しかいないので・・・^^;)
ズズズズッ……
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ママ……!
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ドオオオォォォッ……ン……!!
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祢子女……!
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「!!――」
何かが崩れるような轟音が、遠くで聞こえた気がした。
その合間を縫って、自分を呼ぶ声がしたような気がした。
祢子女はハッとして、俯けていた顔を上げた。
しんとした静寂の中、気のせいか……と思いながら、両眼を閉じてため息をつき、両の目頭を右手で押えた。
ここのところ、動物愛護団体への出張相談や活動の手伝いなど、事務所の外での仕事が相次いでいた。
多頭飼育崩壊や動物虐待の現場の調査、ペットロスに見舞われた飼い主たちのメンタルケアなど、その手の重い仕事が特に多かったこともあって、心身両面で疲労がたまっていた。
部屋は、白熱電灯で照らされていたが、切れかかっているのか光が弱まっており、室内は少し薄暗い。
そこは、マリスが自身が代表を務める会社と称する建物の一室で、マリスが関係者と話をしてくる間に待つようにと言われた場所だった。
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私が支援するある動物愛護団体には、動物保護という表向きの目的の陰に、妖怪を保護するという真の目的がある。
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そんな突拍子もないマリスの話を、祢子女はすんなりと信用した。
それは、マリスの話術が巧みだったからと言うだけではなかった。
実は、彼女自身、妖怪という存在には非常に近しかったからだ。
その一番の例が、彼女の姪の少女しぐれだ。
実は彼女は、人間ではない。齢10数年以上の時を経て妖怪化した猫、いわゆる猫又だ。
幼い頃、両親と逸れ迷い猫となったしぐれを、祢子女は保護し、飼い猫として育ててきた。
やがてしぐれは人間並みの知恵をつけると共に妖力を身に着けて猫の変化となったが、祢子女は恐れることも忌むこともなくそれを受け入れ、人間として面倒を見て、我が子のようにかわいがってきた。
なぜ忌むことも恐れることもないのか。
それは彼女の過去にも大きく関わることでもあったが、その件に関しては、彼女は今に至るまで一切他言したことはなかった。生きていくためには隠しておかなくてはならない秘密だったからだ。
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祢子女はブラウスの胸元に右手を入れ、首に下げていたひもをつまんで取り出した。
色褪せた革のひもの先端に、濃い赤紫色の美しい勾玉が括り付けられていた。
首飾りを取って掌に載せじっと凝視する。
透き通る石に透けて映されるかのように、脳裏にまざまざと過去の忌まわしい記憶が蘇る。
家族も仲間も、帰る場所すらも失った、あの日の悲劇。
思い出す度に悔恨と悲しみで胸が締め付けられた。
(父さま……母さま……)
憂いの色を顔に滲ませて、祢子女は勾玉を握りしめた。
その時。
ガチャッ……
「!!……」
部屋のドアが開く音に反応して握りしめていた右手を胸に引き寄せ、手の中にあるものをものを守ろうとするかのように身をすくめて、祢子女は驚きと共に、ドアの方に振り返った――。
〈続く〉
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というわけで、いよいよヒーローたちが敵陣へ殴りみという本格的な展開に突入した【PixZ- 八咲祢子女行方不明事件編】、こちらのイラスト(illust/80481606)の「一方その頃・・・」的なイラストです。
発端投げといてあまりストーリーの本筋に絡む作品を作れてなくて申し訳ないのですが、せっかく姐さんをめぐって展開するスリルとサスペンスあふれるストーリーを皆さんに盛り立てて頂いておりますので、マリスがでっちあげた「妖怪愛護団体」というキーワードに絡め、今回は祢子女の過去に隠された秘密・・・その一端をほんの少しですが、仄めかしてみました。
ドアを開けた先にいたのが誰なのかは、流れを拾って下さった方におまかせします。(本当は新キャラだしたいなと思ってるんですが、バトルものにマッチするような自キャラがいないというか、オリキャラ自体が姐さんとその関連しかいないので・・・^^;)
イラスト
illustration
※2020
ねこめの事務所
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八咲祢子女
yatsusakinekome
ピクシブ・クロス・ゾーン
Pixiv × Zone
描いてもいいのよ
feel free to draw
🐯🦁
12
15
374
2020-04-01 13:18
Comments (15)
祢子女お姉さん・・・ 早く助けてあげたいです! 私もヒーロー側、ヴィラン側両方で頑張ります!
View Repliesマリス氏の話術だけでなく、祢子女さんの過去も絡んでいるということですか…。今は彼を信じているようですが、今後の言動いかんでは祢子女さんのショックが大きそう…。(汗)
View Replies温厚で且つ気丈という印象が強かった祢子女さんですけど、何やらヤバい過去があったんですね…。 思ってた以上に「妖怪愛護団体」ってデマ発言がエグい所に刺さっちゃってたのか…。
View Repliesとりあえづねこめ姐さんの無事な姿が確認できたようで! もしかしたら手鎖に繋がれて「さあもっと泣きわめけ!」とかしばかれてたり塔の最上階で石にされて助けを待ってるとか想像してしまったw この様子ではマリスを毛ほども疑ってないようなので姐さん大爆発はも少し先になりますかね。
View Replies外ではカオスが繰り広げられていますが、姐さんご本人にお目にかかるのは、事件最初期以来かもしれませんね。勾玉と在りし日の記憶…作品左上のカットインで、「大体のイメージ」は湧きましたが…そのイメージは今のところ、自分の胸に留めておきたいと思います。 いよいよ大詰め。姐さん、ご無事で!
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